島根 この日本史上、非常に重大な場所
日没の聖地、出雲

日本史上、自ずと我が国には、ひときわ重要な場所というものが存在することに争いはありません。一つは京都。そして奈良。さらには鎌倉、江戸・東京が挙げられます。これらと同等に、特に古代、いや日本という国の成り立ちに重大な関係を有している出雲という国は、当然に日本屈指のエリアであると思います。
それは古事記のほとんど半分近くが、島根の中でも出雲地方を舞台とした記述に終始していることからも分かります。
上の写真は、山陰の海に今まさに沈もうとする夕日を撮影したものですが、出雲においては旭日は必ず山から出て、夕日は須く海に沈みます。ところが伊勢。あの伊勢神宮が鎮座しているあの場所では、それが反対に旭日は海から出て、山へと没するのです。

上の画像は出雲大社です。「国譲り」という表現では穏やかに過ぎるようなやり方で出雲王国は消滅させられ、代わりにオオクニヌシはその場所で永遠に祀られることになったのでした。
「神無月」。それは八百万の神々が出雲へ出掛けてしまってご不在になるからで、だから出雲地方だけは神無月が「神在月」になる。考えてみれば不思議なことで、どうしてそんなことになったのでしょうか?
それから三種の神器。皇位継承の証として代々引き継がれてきた宝物ですが、その三種のうちの一つは勾玉です。出雲には花仙山という山があり、ここには碧玉などの勾玉の原材料が豊富にあったことから、勾玉作りの一大拠点になっていました。
それからまた、荒神谷をはじめとして、出雲エリアからは夥しい数の銅剣、銅矛などが出土しています。
それやこれやを考え合わせると、この日没の聖地、出雲という場所はきっと日本という国の成り立ちに重大な関係を有するものとしてまず間違いないと言えるでしょう。
偉人たちの故地、石見
島根県は東西に長い県で、大体真ん中にある三瓶山の東側を出雲地方、西側を石見地方と言っています。昔はそれぞれ出雲国、石見国という行政単位でした。島根県のユニークな点は、その喋り方から風景、文化に至るまで、東と西で全く違うことです。
石見地方はその名のごとく山がちで、山が海へと迫り出した格好だから平野部も僅少で、全体、伸びやかさに欠けたように感じられます。
観光地として有名な津和野は、石見の典型的な街であると言えるでしょう。
そんな石見ですが、少なからぬ偉人がここにゆかりを持っています。まず、柿本人麻呂、それから雪舟です。前者は歌聖、後者は画聖と呼ばれるそれぞれの道の第一人者です。両者ともに、有力な説として石見で亡くなったということになっています(確定はされていない。)。
また、上で触れた津和野。小藩でありながら、実に多くの偉人を輩出しています。西周、福羽美静、小藤文次郎、森鴎外、山辺丈夫などなど。

中でも森鴎外が、「私は石見人の森林太郎として死にたい」という意味のことを言って、その墓にただ「森林太郎墓」とだけ刻ませて津和野に今も眠っていることが私には嬉しい。

城下を写した写真には、よく見ると、たった2両編成の山口線が走っています。
2025年現在、山陰線は大田市から西の石見地方は良くも悪くも電化されておらず、だからこの地方の人々は鉄道を「汽車」と呼んでいます。
また、同じく城下の写真には、目立って赤茶色をした家並みが見えますが、これは「石州瓦(石見瓦)」で葺いてあるので、その名のとおり、石見地方の風物です。
とくに冬、とかく陰鬱な空模様になりがちなこの地方を明るませています。
島根の本
私たちLab 鎌倉奥乃院は島根の本を制作しました。よかったら、下をチェックしてみてください。
「本当の島根」 著者:益田寿永
以下、本の紹介の抜粋
東京で生まれ育った著者が、島根県に実際に五年間暮らした体験に基づいて書いた、真に迫る「本当の島根」の観光ガイドブックです。
島根県はかつての出雲国、石見国、隠岐国が合体して出来た県ですが、いまだにこれら三国が併存している不思議な県です。
出雲国内には、なんといっても日本という国の成り立ちに大いに関係のある出雲王国があった場所。ここは日本史上、非常に重要な場所であることから、上古のエネルギーが磁場と化して、今なおここへ立ち入る者の心を励起させます。隣接する松江は湖水とお茶のホッと心の和む美しい街。
石見はなんといっても歌聖柿本人麻呂と画聖雪舟のそれぞれの道の第一人者に大変深いゆかりがある場所。そして山陰の小京都津和野は、森鴎外をはじめ、多くの偉人たちを輩出しました。
津和野よりさらに奥へ入った、広島県との県境に近い場所には、毛利元就躍進の第一の契機を与えた高橋氏の哀しい歴史、それから大森銀山(石見銀山)の争奪を巡る、尼子と毛利の激しい戦闘が宍道湖岸などで繰り広げられました。
隠岐国はなんといっても律令時代からの流刑の地。中でも後鳥羽院はこの島に流されたことで、無双の歌人になったのでした。
本書は島根の歴史のみならず、文芸、芸能、映画、生き物、グルメなどなど、その筆の及ぶところは多岐にわたっています。
随所に著者が撮影した写真を掲載してあります。
目次:
まえがき
1 田畑修一郎著「風土記 出雲・石見」
2 人麻呂と雪舟、そして益田氏の街
3 高橋氏哀史、そして車寅次郎
4 古事記、尼子氏、そして映画
5 水の都、松江
6 後鳥羽院終焉の島
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「風土記 出雲・石見」 著者:田畑修一郎
以下、本の紹介の抜粋
島根県出身の作家、田畑修一郎による、不思議の国、島根県の文学的ガイドブック。
島根県はかつての出雲国、石見国、そして隠岐国が合体して出来たのだが、とくに出雲国と石見国は、隣接していながら全然異質な国同士の合体だった。
古代王国と八百万の神、製鉄、和菓子と抹茶文化の出雲国、柿本人麻呂、雪舟、西周、森鴎外等偉人たちに深いゆかりがある石見国、これらのテーマについて、小説家ならではの筆致で面白く島根を解き明かしてくれる。
なお、田畑修一郎は、鎌倉文士の一人中山義秀と芥川賞を競い、惜しくも落選した小説家です。
目次:
まえがき
出雲
1 水と空と雲、2 出雲的なもの、3 松江の町、4 松平不昧公、5 出雲の人・物、6 出雲鉄と安来節
石見
1 石見の歌、2 石見の文化的要素、3 石見赤瓦と粗陶器、4 石見山間の町、5 石見半紙、6 石見における雪舟、7 石見と柿本人麿、8 三瓶山
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Lab 鎌倉奥乃院 代表 益田寿永


