本当の東京〜東京の詳しいガイドブック〜

私は東京で育ちました。近くには「チンチン電車」こと都電荒川線が走っていました。今は鎌倉に住んでいますが、ここにも路面電車が走っています。江ノ電です。
路面電車の走行音は私にとっては特別な音で、ある懐かしさが胸に響いてきます。
私は母とチンチン電車に乗って、よく「あらかわ遊園」に行きました。この遊園地は今もありますが、隅田川の岸辺にあります。隅田川の支流に音無川(石神井川)というのがありますが、私の通っていた小学校と中学校はいずれもこの川の岸辺にありました。
飛鳥山という小山も近くにありました。お花見といえば、決まってこの飛鳥山でやりました。まだ回転式の展望台があった頃です。当時、あの辺では随一の高さを誇っていたので、私はそこへ登るのが楽しみでした。
後で知ったことですが、飛鳥山は江戸庶民の一大行楽地だったそうで、なるほど、山の麓にはきっとその頃は鮎をも泳ぐ音無川の清流があり、川に面しては料亭・茶店などが軒を並べていて、行楽地たるに相応しい景観を形作っていました。いや、それだけではなく、稲荷社や名瀑まであったのですから、なおのことです。
この名瀑、当時は七つあったそうです。現存しているのは一つだけ、すなわち「名主の滝」です。少年時代の夏、私は度々ここで水遊びをしました。が、その時の滝は名瀑のイメージとはほど遠い、貧弱なものだったと記憶しています。
稲荷社は、今日の「王子稲荷神社」のことで、行くと狐の石像がやたらにあったことを記憶しています。崖のところに狐の穴もあって、不思議に眺めたものでした。
後年、広重の「名所江戸百景」を知り、そこに飛鳥山も王子稲荷もその狐もあり、王子の滝については幾枚もあることを発見して、私は無性に嬉しくなりました。と同時に、江戸時代の東京はかくも美しかったのかと目から鱗が落ちる思いをしました。
「名所江戸百景」では多く水辺の景色が描かれています。それもそのはず、江戸は「水の都」だったのですから。
なにも天国とか極楽浄土とかは何処か遠い場所にあるのではなくて、かつてはまさしく我が足下にあったのだと、そんな思いがしたものでです。
Lab 鎌倉奥乃院では、かつての江戸・東京を憧憬しつつ現在の東京を見つめて、東京の詳しいガイドブックを制作しました。題して「本当の東京」といいます。是非、下をチェックしてください。
Lab 鎌倉奥乃院 代表 益田寿永
「本当の東京」〜東京の詳しいガイドブック〜 著者:遠田寿
以下、本の紹介の抜粋
首都東京、そして国際都市東京は、徳川氏の分厚い江戸時代の上に成り立っています。渋谷・新宿・六本木ばかりが東京ではありません。
本書では東京の本当の姿を浮き彫りにしていきます。
なるべく写真を多く掲載し、東京のガイドブックとしてもお読みいただけます。
目次:1 水の都、2 魚、3 家康、4 皇居、5 庭園、6 柴又、7 上野、8 浅草、9 日暮里、10 王子、11 板橋、12 八丈島、13 武蔵野
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