鎌倉の「三大龍図」を観る
建長寺「雲龍図」

鎌倉の十二所に住んだ画家、小泉淳作の筆になる建長寺法堂の天井画。
小泉淳作は山本丘人に師事した画家ですが、いわゆる画壇とは無縁で孤高の画家といえます。花や野菜の静物画、山海の風景をときに水墨画により描いています。
概して画面は暗く、けっして口当たりの良い絵ではありませんが、重厚で深い精神性が感じられ、眺めているうちにだんだんとその魅力に引き込まれていく種類の絵画であると思います。
京都の建仁寺法堂の天井画「双龍図」を描いた画家としても有名です。
円覚寺「白龍図」

前田青邨が監修し、守屋多々志が描いた白龍です。円覚寺仏殿の天井画です。
前田と守屋は師弟関係にあります。また共に鎌倉に住んだ画家です。
前田青邨は言わずと知れた歴史画の大家です。「洞窟の頼朝」はあまりにも有名です。ほかに頼朝の平家打倒の旗揚げに一族挙げてこれに応じた老将「三浦大介」、「大物浦」、「知盛幻生」、「細川ガラシャ夫人像」、「腑分」など、中には八十歳を過ぎて描いたものもあり、全くこの画家には老いは無関係であるかのごとく、凄味あり、壮重で、格調高く、あるいは絢爛たる絵画を制作しています。
守屋多々志もまた歴史画を代表する日本画家の一人で、その深い教養に裏付けられた数々の名作を残していますが、中でも有名なのは「平家納経」で、構図といい彩色といい非常に優れた作品です。
鎌倉をこよなく愛したこの画家は鎌倉に関係する卓抜な歴史画も少なからず描いています。たとえば「聴聞(北条政子)」や「鎌倉右大臣実朝」などです。
私個人的には、歴史画ではありませんが、鎌倉を画題にした作品として、「年々歳々(鎌倉山)」という作品が好きです。これは鎌倉山の桜と真っ赤なポルシェという組み合わせで、一見奇抜なようですが、桜花散り敷くポルシェの配置がいかにも鎌倉山らしく、車体が画面に不思議に融合していて、優しい詩情を湛えた名品であります。
常楽寺「雲龍図」

仏殿の天井画です。狩野雪信が描いたとされています。この絵師は、私の大好きな絵「夕顔棚納涼図」(国宝)を描いた久隅守景の娘さんだそうです。
この龍図には逸話があります。ここに描かれている龍は夜毎水を飲みに出掛けていた。その度にお堂がミシミシと鳴るので寺の人間は困っていた。そこで出歩かないように龍の両目を塗りつぶしたところ、音がしなくなったというのです。なるほど、龍の目をよくみると、塗りつぶされた痕跡が認められなくもありません。

常楽寺には名宰相、北条泰時の墓がありますが、裏山には清水冠者こと木曽義高の墓があります。この二人の生涯、まさに光と影の対を成しています。
義高の不幸は大姫の不幸を招き、さらには北条政子の不幸へと波及していきます。
思えば、北条政子も気の毒な人です。「尼将軍」などと称されながらも、頼家以下、我が子全員に先立たれているのですから。これ以上の不幸があるでしょうか。
江ノ島の亀図

おまけとして、江ノ島の江島神社にある「八方睨みの亀図」を簡単にご紹介します。この絵も天井画です。
なんと、あの琳派の巨匠、酒井抱一が描いたものだそうです。
実物は海風による損傷から守るため江島神社の社務所に保管してあるそうで、上の画像のものは日本画家の片岡華陽画伯によって描かれた復元画です。
どこから見ても視線が合うように描かれているそうですから、皆様も試してみてください。
日本の絵画史と鎌倉の画家たちがよく分かる本
絵画は鎌倉とは切り離せないもう一つの顔です。
そこで、私たちLab 鎌倉奥乃院は、「鎌倉の歴史と芸術」という本を制作し、この中の「鎌倉の絵画」という章において、日本の絵画の歴史と主な作品、そして鎌倉の画家とその主な作品を詳しく紹介しています。
興味のある方は下を是非チェックしてみてください。
「鎌倉の歴史と芸術」 著者:益田寿永
以下、本の紹介の抜粋
鎌倉という街は私たちを幸福にしてくれます。そして今や、その「私たち」とは、日本人だけではなく、世界の人々がこれに該当するでしょう。 中でもこの本の著者にとっては、その人生において、鎌倉は欠くことのできない必要な街になっています。鎌倉を思うだけで元気が出てきます。
どうして元気が出るのか?
鎌倉は多面的な街です。一面に中世の歴史があり、他面にはグルメやマリンスポーツ、それに文化、芸術、そして海山の自然があります。
人々に幸福をもたらす街、元気にしてくれる街、鎌倉とは一体どんな街なのか?
本書では、「歴史」「和歌・短歌」「絵画」そして「映画」の四つのテーマから鎌倉の正体を明らかにしていきます。いずれも鎌倉に深く根を張っている重要なテーマです。
鎌倉を知ることは日本を知ることであり、それはその歴史と美しさに我が身がいつも包まれているということです。
ストレスなくお読みいただくための一助として、要所に写真を掲載しています。
大まかな目次:「鎌倉の歴史」「鎌倉の和歌・短歌」「鎌倉の絵画」「鎌倉の映画 松竹大船撮影所」
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Lab 鎌倉奥乃院 代表 益田寿永


